「幼児教育は必要ない?」
「子どもに効果があるの?」
「幼児教育ではどういうことをすればいいの?」
幼児の時期にどんな毎日を過ごせば、実りの多い豊かな人生を送れるのでしょうか。そのために幼児教育が必要なのか悩むパパ、ママは多いでしょう。
結論からいうと幼児教育は必要です。そしてそれは、子どもの将来に大きな影響を与えます。
そこで本記事では、「幼児教育は必要ない」という誤解を解き、幼児教育の重要性とすぐに始められる方法を以下のように紹介します。
- 「幼児教育は必要ない」は誤解!むしろ重要である根拠を解説
- 幼児教育は必要ないといわれる3つの理由
- 必要ないといわれる幼児教育をおすすめする5つのポイント
- 【始めてみよう】手軽にできる3つの幼児教育法
- 貴重な幼児の時間を親子で楽しもう
子どもがより良い人生を歩めるように、本記事をぜひ参考にしてください。
目次
「幼児教育は必要ない」は誤解!むしろ重要である根拠を解説
「幼児教育は必要ない」という意見がなぜ多く見られるのでしょうか。その誤解について以下の2点に絞って詳しく解説します。
- 「幼児教育」=「詰め込み教育」ではない
- 幼児教育が重要であることを証明する調査結果
ひとつずつ見ていきましょう。
1.「幼児教育」=「詰め込み教育」ではない
幼児教育というと「学校でやるようなお勉強」を早期から始めることをイメージする人もいるかもしれません。実際、詰め込み教育は子どもがかわいそう、だから幼児教育は必要ないという意見があります。
しかし、これらは完全な誤解です。
幼児教育は詰め込み学習のことではありません。幼児教育とは「小学校入学前の教育全て」のことなのです。
例えば1歳児を砂場で遊ばせるとき、口に砂を入れてはいけないことを教えます。これが幼児教育です。毎日の生活や遊びの中での「経験」や「教え」が幼児教育なのです。
文部科学省でも「幼児教育が重要である点を前提に」今後の方向性を示しています。
幼児教育は子どもを育てる上で絶対必要なものといえます。
参考:文部科学省 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の方向性
2.幼児教育が重要であることを証明する調査結果
1962年~アメリカのノーベル賞経済学者ジェームズ・J・ヘックマンが行った
「ペリー就学前プロジェクト」は幼児教育の重要性を明らかにしています。それは、「幼児教育をしたグループ」と「幼児教育をしなかったグループ」に分け、40年間に渡って比較調査したものです。
その結論は「 5歳までの教育が、人の一生を左右する」というものでした。
このプロジェクトを以下の3点に絞って見てみましょう。
- 対象者
- 教育内容
- 追跡調査結果
それぞれまとめながら解説します。
1.対象者
- アメリカ ミシガン州 ペリー小学校付属幼稚園
- 低所得者層の幼児 123名
- 3~4歳児
2.教育内容
- 1日2時間半の授業 アクティブラーニング方式
- 25人のクラスに専門指導員4人
- 1週間に1度、1時間半の家庭訪問
- 月に1度、両親達がミーティング
- 2年間継続
アクティブラーニング方式:従来のように受動的な学習ではなく、能動的に学習プログラムに参加する学習方法
3.追跡調査結果
調査項目 | 幼児教育を受けたグループ | 幼児教育を受けなかったグループ | |
---|---|---|---|
5歳まで | IQが90以上 | 67% 高 | 28% 低 |
9歳 | 対象者の平均IQ | 同じ | |
14歳 | 基礎学力到達度 | 49% 高 | 15% 低 |
19歳 | 高校卒業率 | 77% 高 | 60% 低 |
女子の高校卒業率 | 88% 高 | 46% 低 | |
40歳 | 逮捕歴5回以上 | 36% 低 | 55% 高 |
年収2万ドル以上 | 60% 高 | 40% 低 | |
既婚率 | 43% 高 | 25% 低 | |
生活保護受給率 | 10% 低 | 23% 高 |
参考:文部科学省科学教育費基盤 ひとづくり革命基本構想参考資料
5歳の時点では、幼児教育を受けたグループのほうが「IQ90以上」の子が2倍以上多い結果でした。一方で、9歳の調査時では、幼児教育のあり・なしにかかわらず平均IQが同じ結果となり、有意差がないようにみえます
しかしそのまま調査を続けると、人生の幸福度において、幼児教育を受けたグループのほうが高くなる結果となりました。
こにことから、ヘックマン氏は「幼児教育はIQなどの認知能力を伸ばすのではなく、非認知能力を伸ばすことにつながる」と結論づけたのです。
能力 | 詳細 |
---|---|
認知能力: Q等のテストで測定できる能力 | ・言語能力 ・論理能力 ・数学的能力など |
非認知能力: 測定できない能力のこと全般 | ・頑張る力 ・意欲 ・協調性 ・忍耐力 ・自制心 ・創造性 ・コミュニケーション能力など |
つまり、5歳までの幼児教育がその後の人生に大きく影響を与えると証明したのです。
幼児教育は必要ないといわれる3つの理由
なぜいまだに幼児教育は必要ないという意見があるのでしょうか。それは主に以下の3点が理由になっていると考えられます。
- 効果が目に見えない
- 子どもが受け身になり主体性が無くなってしまう
- 子どもに過大なストレスを与える
ひとつずつ説明します。
1.効果が目に見えない
幼児教育はすぐに結果が出ないし、効果が目に見えないから必要ないと言われてしまいます。たしかに、幼児教育は即効性はないと考えるのが正解です。
幼児教育の目標である「頑張る力」とか「忍耐力」を育てることは、そもそも計ることができませんし、今日の学習がすぐに生きるものでもないのです。幼児期に見えないところで育まれ、蓄積され、少しづつ発揮される力です。
幼児教育は生涯にわたる生き方の基礎を作るためのものと考え、短期的な結果を求めないことが大切です。
2.子どもが受け身になり主体性が無くなってしまう
幼児教育を受けると受け身になり主体性がなくなるというのは、全くの誤解です。主体性が無くなるのは、常に親が先行してものごとを決定しているからです。
主体性を育てる言葉かけをすることこそ、幼児教育が目指すところです。
例えば主体性を育てるには、子どもが「やりたい」と言ったことを尊重し、多少失敗しても責めることなく、最後までやらせることが必要です。
また、子どもに「外で遊ぶ?家で遊ぶ?」など選択させて意志を尊重することも主体性を伸ばす大切な教育方法です。幼児教育は主体性を育てることに重きをおいた教育なのです。
3.子どもに過大なストレスを与える
親の過度な期待による詰め込み教育は、子どものストレスになります。詰め込み教育は幼児教育ではありません。幼児教育とは毎日の遊びの中での教えことです。
詰め込み教育による弊害は、以下のような症状があげられます。
- 自分で感情がコントロールできなくなる
- イライラ
- 腹痛
- 皮膚のかゆみ
子どもの様子を注意深く見守り、ストレスによるサインを見逃さないようにしましょう。
幼児期に体験すべき外遊びの時間を削って、詰め込み教育をすることは、将来的に子どもの幸せにはつながりません。
例えば「文字」「数」についても親の決めた方法で詰め込み的に学ばせるのではなく、興味をもった時を見計らって、遊びの中で教えていくと何のストレスもありません。
詰め込み教育ではなく、子どもの興味を見極め、遊びながら正しい幼児教育をしましょう。
必要ないといわれる幼児教育をおすすめする5つのポイント
遊びを中心とした正しい幼児教育は、子どもの将来に良い影響を与えます。ここでは、幼児教育をおすすめする5つのポイントを紹介します。
- 脳が発達する
- 集中力が身につく
- 好奇心が育つ
- 意欲・思考力がつく
- 創造性を高める
このポイントをひとつずつ解説します。
1.脳が発達する
子どもの脳は3歳までに約90%ができあがるともいわれています。子どもの脳の発達にあわせて刺激をすることがポイントです。
医学博士である東北大学の瀧靖之 先生によると「乳幼児期はとくに、飽きっぽくて次々に興味を持つことが変わるものですが、脳にとって新しいことを始めるのはとてもいい刺激」とのことです。
脳は後頭部から前に向かって発達していきます。脳の成長に合わせた関わり方を以下の表にまとめました。
年齢 | 成長が始まる 脳の部分 | 脳の成長と働き | 幼児教育のヒント |
---|---|---|---|
生後すぐ~ 2才ころ | ・後頭葉 ・側頭葉 ・頭頂葉 | 視覚・聴覚・触覚や言葉の理解 | 生後~6ヶ月 ・見る、聞く、ぬくもりを感じる ・脳を育てるための大切な土台 6ヶ月~2才(母国語を習得する) ・語りかけ、抱っこ・さまざまな種類の読み聞かせ |
3〜5才ごろ | ・頭頂葉 | 体の動きにかかわるの運動野が成長のピーク | 2才~4才 (好奇心が育つ) ・知的好奇心が育つ・図鑑、絵本たくさん見せてあげ、さらにその知識とリアルな体験を結びつける 3才~5才 (運動領域が発達する) ・有酸素運動を行うと、記憶にかかわる海馬という部分の成長が促進され、記憶力をアップ→歩く、走る、跳ぶはさみを使う、楽器を演奏する |
脳の発達に合わせて働きかけると良い刺激になり、ぐっと子どもの能力が伸びていきます。
2.集中力が身につく
夢中になって遊ぶ体験を積むことが重要です。
集中している状況というのは、脳の線条体が活発に働いている状態のことです。線条体とは「やる気スイッチ」のことで行動と快感を結びつける役割をしています。無理やりやらせても線状体は活発化しません。
好きなことをとことんやらせ線条体を活発化させることが大切です。
また、好きなことを納得するまでやらせると1つのことに習熟します。すると脳が刺激され、関連する次のことへ、また次のことへと集中し習熟することに発展していきます。放っておいても自分で学ぶ状態です。
幼児時期には、この素地をつくるために好きなことをさせる、夢中になって遊べる環境作りがポイントになります。
3.好奇心が育つ
子どもき2~3才ころ「なんで?」「どうして?」を連発する時期があります。好奇心が高まっているのです。その時に忙しいことを理由に「後で」と言って取り合わないと好奇心はしぼんでしまいます。この時期を大切にしましょう。
いつも正解を説明す必要はなく、親が知らないことも多いので「どうしてだと思う?」と問いかけたり、一緒に調べたり、調べる方法をアドバイスすることが重要です。例えば「一緒に図鑑で探してみよう」と親子で探すのもひとつの手です。
脳科学者の茂木健一郎氏によれば「子供たちの知的好奇心を支えてあげるコーチ役」に徹するのがよいとのことです。一緒に楽しく調べていくうちに一人でどんどん調べていくようになるでしょう。
4.意欲・思考力がつく
意欲、思考力を育むには、自然での体験などが重要です。自然の中で予想外の経験をさせ、「なぜ、そうなったか」を考えることが思考の始まりです。
自分から何かに興味を持つことが重要で、大人から見ると役に立たないことでも突き詰めることに意義があります。最短ルートで解答に到達することが重要ではありません。わくわくしながら本人が考えることで脳の思考回路が発達していきます。
また、思考回路の発達は、言語の発達と連動しているので、間違っていたとしても最後まで説明を聞いてあげることも幼児教育として大切です。
5.創造性を高める
創造性を高めるには「時間」「空間」「ガラクタのような素材」があればいいとする説もあります。子ども達は石ころを自動車にもケーキにも見立てます。自由時間にシンプルなおもちゃで存分に遊ばせるとよいでしょう。
失敗をしないように先回りしたアドバイスは不要です。失敗してから、次はどうすればよかったのかを考えさせればいいのです。
【始めてみよう】手軽にできる3つの幼児教育法
今日からできる手軽な幼児教育法を3つ紹介します。
- 外遊びの頻度を増やすこと
- 子どもの興味にあったおもちゃを与えるコツ
- 図書館に週1回通う習慣
ちょっとしたコツや注意点も含めましたので、ぜひ読んで参考にしてください。
1.外遊びの頻度を増やすこと
できれば毎日、近くの公園で思いっきり遊ばせましょう。外遊びは最高の幼児教育です。砂場、ぶらんこ、滑り台、子どもは走り回って夢中になって遊びます。
例えば、滑り台を反対側から登ろうとした時、親の出番がやってきます。以下はちょっとしたコツです。
- 公園に誰もいなければ、滑り台を反対側から登らせてみる
- 同年代のお友達がいたら、その保護者と話し合って皆で「反対登り」をしてみる
- 裸足になってかけ上ってみる
- より小さい子がいたら、きちんとルールを説明して階段から登ってすべる
保護者同士でコミュニケーションがとれていれば、幼児教育は無限に広がっていきます。
また、同じ滑り台でも日によって、あまりすべりが良くない日があったり、つるつるすべる日があったりして、子どもには発見の連続です。
上からボールをころがしたり、枝をころがしたり、遊びは次々発展し、好奇心や意欲、創造性の力を高めます。
2.子どもの興味にあったおもちゃを与える重要性と注意点
積み木、ブロック、粘土遊び、ごっこ遊びなどは子どもの創造性を高めます。シンプルなブロックなどは長く使えます。積み上げたり、組み立てたりして一人で真剣に遊んでいるときは、声をかけずにそっとしておきましょう。集中力や創造力が育っているのです。
お絵描きや迷路遊びも子どもの成長を見てやらせてみると、のめり込んでやりだす時があります。迷路遊びの延長線でひらがなを書いたり、「何て読むの?」という問いに答えているうちに、50音を覚えてしまう場合もあります。
子どもは遊びと勉強の区別がありませんから、夢中になって遊びの中で50音を覚えてしまうのです。
ここで注意しなければならない点は、ひらがなや数字に興味をもった段階で、一気に教え込もうとしないことです。親はチャンスと思ってついつい教え込もうとしがちです。子どもは飽きて、別のことをやりたがっているのに、「今日は『たちつてと』まで教える」などとノルマ化してしまうと詰め込み教育につながります。
子どもの様子を見ながら興味をもった時点に遊びながら、教えましょう。
3.図書館に週1回通う習慣
子どもと一緒に週に1回は図書館に行って、限度いっぱいの本を借りてきましょう。子どもは同じ本を何度も借りることがありますが、そこは意見を尊重してください。子どもの希望と親の視線で丁度良いと思われるレベルの本を借りることをおすすめします。
レベル感に迷う時は、2024年度版 くもんのすいせん図書一覧表が役に立ちます。寝る前に限らず時間の許す限り、読み聞かせをしましょう。
動物園や水族館に行った日には、帰宅後に図鑑を開き、「今日、何見たっけ?」などと言葉をかけることは良いことです。子どもの話す力も育ち、一日を楽しく振り返ることができます。
また、ストーリーのある絵本を題材に「かわいそうね」など、言葉かけをすると想像力や共感性が育ち、人の気持ちが自然に分かっていくようになります。
絵本は子どもの感性を養い、言語能力を高め、創造力や思考力を育てます。
図書館には「おはなし会」などのイベントがあったり、自分自身が子どものころ好きだった懐かしい絵本があったり、親子で楽しめる空間ですので図書館通いはおすすめです。
貴重な幼児の時間を親子で楽しもう
幼児のうちに思い切り遊ばせ、多くの絵本を読んであげましょう。幼児の時間はたったの6年間だからです。6年間の中で、人間としての核部分ができあがるのです。家族で山や川で遊んだり、雨の日に長靴を履いてお散歩したり、火を使わせてみたり、いろいろな体験をさせましょう。ぜひ親子で貴重な幼児の時間を楽しんでください。
仕事をしていてなかなか毎日は時間がないという方もいるでしょう。大切なのは時間の長さではなく、本気でどれだけ深く子どもと関われるかです。10分でもひざの上に乗せて本を読む、休みの日に夕食のお手伝いとして包丁を使わせてみるなど、わくわくできる体験は身近にもたくさんあります。この時期を楽しむことが「子育ての醍醐味」です。
子どもはあっという間に大きくなってしまいます。今の幼児の時間を親子で存分に楽しみましょう。